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日本の給与はなぜ上がらないのか?①

お金

※写真はイメージです

岸田総理は、国会の施政方針演説で「近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します」と宣言しました。
安倍政権のときから継続になりますが、企業への賃上げ要請を行うようです。

 

総理大臣たちが賃上げを求める背景には、日本人の給料は、1997年から20年間変わっておらず、世界における日本の平均年収の順位は4位から22位にまで落ちたことが要因でしょう。
一方、アメリカの平均年収は2倍にもなっています。

 

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お金だけがすべてではありませんが、幸せに生きていくためには、豊かな生活を送れるだけの給料が必要になります。
誰でも自分の給与を増やしたいと考えているはずです。

 

それでは、日本の給料はどうすれば上がるのでしょうか?

 

昔の統計で恐縮ですが、2014年の統計では、全国382万企業のうち、99.7%が中小企業、85.1%が小規模企業となっています。
小売、宿泊・飲食、生活関連サービスなどは、個人経営の小規模企業の割合が高くなっています。
また、資本金一億円以下の中小企業の90%は、同族会社がほとんどで、家族経営が大半と言われています。

 

つまり、日本の企業のほとんどが中小零細・個人経営の企業と言えましょう。

 

また、全体の従業員数4,794万人に対して、大企業は1,433万人、中規模企業が2,234万人、小規模事業者は1,127万人です。
割合で示すと、大企業が29.9%、中小企業が70.1%になります。

 

これは都市と地方の傾向とも一致します。
日本の各地の就業者の割合は、東京都を代表とする主要都市の就業者は3割程度で、それ以外の7割が大都市以外で働いています。
大都市では大企業が多く、地方では中小零細・個人経営の企業が数多く存在している傾向があります。

 

最近、連合(日本労働組合総連合会)は、岸田総理の奨励の追い風も受けて、ベースアップをより声高に叫んでいます。
日本の労働者の代表のように大声で叫んでいますが、連合は労働組合を有する大企業の労働者の代弁者であって、3割程度の労働者の意見しか反映していないと考えられます。

 

また、3割の「都市・大企業」の改善も必要ですが、日本全体の平均給与を上げるためには、3割を改善しても全体への影響は小さく、7割を占める「地方・中小零細企業」を改善する必要があります。
また、3割の「都市・大企業」の社員はそれなりの暮らしができていますので、社会問題となっている生活困窮者を救うためには、7割の「地方・中小零細企業」の社員の賃上げが急務と思われます。

 

賃上げの議論になると、サヨクの人たちは大企業を仇のように批判し、搾取されている従業員の給与を上げるべきだと言います。
100年以上前に書かれたマルクス資本論」のようなことが、現代の日本でも起きていますでしょうか?

 

現代では、大企業は影響力の大きさから社会的責任を負わされており、また優秀な人材を集める必要があることから、給与や福利厚生が充実している傾向にあります。
ホワイト企業の一覧を見ても、大企業が多く、労働基準法などのコンプライアンスを遵守しなくてはならないことから、大企業の方が給与も高く、従業員に還元しているのではないでしょうか?

 

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また、サヨクがよく指摘する点としては、大企業は内部留保を増加しているのに、社員の給与は増やしていないと言われています。
投資目的ではなく、利用予定のない内部留保を貯めているだけであれば、社員に還元するべきだという論調が見受けられます。

 

近年、交通・物流の改善、インターネットによって経済のグローバル化が進行しました。
グローバリゼーションの台頭の中で、日本企業も株主重視が必須となり、株主価値の最大化が強く求められるようになってきました。
また、日本企業の不祥事や想定外の下方修正により、株価が下がり、株主が損失を被るという問題も起こり、海外投資家や若い投資家の中には「もの言う株主」が増え、企業はより一層、コーポレートガバナンスに注力する必要が生じました。
いまだに海外投資家は、日本企業のコーポレートガバナンスに満足していないと言われており、グローバルな株式取引所の競争の中では、東証の地位が低下していると言われています。

 

上場企業は自己資本比率が40%以上であれば、平均以上に健全な財務体質であると言われています。
このような株主重視の中、株主にアピールするために、他の指標よりも安易に、利益を続ければ達成することができる自己資本比率40%以上を目標にしてしまうのではないでしょうか。
(それを目標にすることが、日本の経営者が有能ではないことを証明していると言う人もいるかもしれませんが……)

債務超過黒字倒産のリスクを避け、経営の安全性を株主や取引先に示すためにも、自己資本比率を高める必要があります。

 

大企業にも課題は数多くあり、より良い経営・社員への還元は必要ですが、何もかも大企業のせいにしても、賃上げの問題は解決しないものと思われます。
小零細企業はブラック企業も一定程度存在しますので、優先順位としてはまずはそちらを改善するべきと考えられます。

 

テレビでも、インターネットでも、「日本の給与はなぜ上がらないのか?」をテーマに数多くの意見が交わされています。
簡単には語りつくせませんので、次回以降も、このテーマで検討したいと思います。

 

最後に、カタカナで「サヨク」と表記していますが、漫画家小林よしのりさんが作った造語を利用させていただいています。
従来の「左翼」は社会主義共産主義といった政治的立場を示す用語として使っていましたが、最近は、イデオロギー的な議論を避け、「平和・国際協調・人権・民主主義・環境保護」といった口当たりのよいスローガンを掲げて活動する思想・立場の人たちが現れていますので、旧来の「左翼」と意味を分けるため、「サヨク」と表記しています。
非常に的を得た用語のため、利用させていただきました。

小林よしのりさんに感謝します。