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日本の給与はなぜ上がらないのか?③

お金

※写真はイメージです

前回に引き続いて、日本の給料はなぜ上がらないのかについて、「都市・大企業」に焦点を当てて語りたいと思います。

 

日本の「都市・大企業」の問題として、新卒一括採用によるメンバーシップ型雇用により人材を採用し、研修やOJTで会社に染まり切った人材を作り出し、年功序列や終身雇用という旧来の制度により、会社に貢献できていないオジサンに高い給与と権限を与えています。
デジタル導入や改革に積極的な若い優秀な人が権限を与えられず、給与も低いため、モチベーションが上がりません。
また、正社員と契約社員派遣社員・アルバイトなどの間では、同じ仕事をしていても、待遇面で大きな格差があり、従業員に不平不満があったことから、政府は「働き方改革」のテーマの一つとして「同一労働同一賃金」を掲げています。

 

同一労働同一賃金」とは聞こえがよいですが、これは従来の「メンバーシップ型雇用」から、海外と同様に、業務に人を割り当てる「ジョブ型雇用」へ制度を変革することを目指しています。
デジタル化などの変革の中で高度人材が不足する一方、新たな仕事のやり方に切り替えができず、知識の吸収が難しい中間層が改革を阻害しており、日本企業が海外企業と競争していくために、企業の人材の新陳代謝を促す必要があります。

 

さて、大企業はメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に変更すれば、日本の大企業は海外と肩を並べるまでに復活しますでしょうか?

 

■メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に変更すればよいのか?

 

www.persol-group.co.jp

ジョブ型雇用とは企業と個人が仕事内容や役割をもとに雇用契約を結び、その仕事の難易度や責任の重さなどによって報酬が定められています。
会社の中の各組織の仕事内容や役割が一つひとつ定義されていて、ポスト(席)の数が決まっています。
ポストが空いた場合は社内で公募を行い、応募する人がいなかったら、社外から採用します。

 

自分の仕事の範囲が決まっていますので、基本的にそれ以外の仕事は行いません。
仕事には雑務やそれぞれの役割の間に落ちてしまうものもありますが、柔軟な対応は行いません。

また、ジョブ型雇用では仕事と報酬が決まっていますので、
「昇進」するためには、今より上のポストに移る必要があり、ポストが空くのを待つのか、誰かをポストから追い出すしかありません。

 

メンバーシップ型雇用では手取り足取り、仕事を教えますが、ジョブ型雇用ではその仕事ができるから、そのポストに座っているはずなので、人を育てることはありません。
より上の仕事にチャレンジするにも、事前に自分でスキルを身に付けておき、チャンスを待ち、やっとお鉢が回ってきたら、自分の力だけでその仕事の成果を上げる必要があります。
新たなポストに就いたときのプレッシャーは、これまで以上になるでしょう。

 

また、ジョブ型雇用が当たり前のアメリカでは、上司にとても気を使い、ゴマスリを行うと言われています。
仕事の結果を出せなければ、ポストから外して別の人材を充てる必要がありますので、いつでも上司は部下をクビにします。
実際にはアメリカでは意見が合わなかったり、会社の方針で組織変更を行う場合でも、部下をクビにします。
アメリカではジョブ型雇用の社会が長らく続いており、社外からも簡単に人を集めることができるので、今の社員を大切にしようと思う気持ちはありません。
アメリカの企業で成功するタイプの人は、「人の足を引っ張るのが上手い」「強いコネクションを持っている人」とも言われています。
アメリカでは「一緒に仕事をしたい同僚は、僕より能力の低い人だよというジョークもあるそうです。

 

また、日本でジョブ型雇用を取り入れた企業もそれに習っていますが、住宅手当・家族手当などの仕事の責任の重さに関係のない報酬はありません。
アメリカでは育休も、通勤交通費の支給もないそうです。

 

派遣社員は給与が低いように言われていますが、例えば、デジタルに関しては月単価150~300万の人たちもいます。
派遣社員の誰もが、給与が低いわけではありません。
派遣社員はジョブ型雇用になりますので、会社の制度としてジョブ型雇用を採用した場合、正社員の給与を下げることにはつながりますが、派遣社員の給与アップにはつながりません。
派遣社員の問題は、派遣会社の営業力のなさ(単価を下げてでも派遣するなど)、派遣会社がピンハネを行う点です。
また、派遣社員・アルバイトは事務処理など簡単な業務が多く、ジョブ自体の単価が低いため、会社としてより価値のないと判断し、もっと報酬を下げるかもしれません。

 

確かに、これまで日本ではメンバーシップ雇用を採用し、型にはめた社員を作り出してきましたので、組織が硬直し、成長ができなくなってしまった問題があります。
また、定期的に異動を行って、様々な部署を経験したジェネラリストばかりを育てました。
ジェネラリストは、柔軟な思考力やコミュニケーション能力があり、人をまとめる力がありますが、日本の大企業では、スペシャリストの育成を疎かにしていました。
各業務の専門性が高くなる中、各分野のスペシャリストが必要になってきていますが、スペシャリストの育成プランや評価制度を設けておらず、自己努力でスキルを身に付けても評価・報酬が見合わず、社外に人材が流出しています。

 

それでは、制度としてジョブ型雇用を取り入れて、高い報酬を払って、スペシャリストを集めれば良いでしょうか?

それである程度は改善するかもしれませんが、効果は限定的です。
例えば、デジタル人材の必要性が急務と言われてますが、デジタルだけに詳しければその会社を改革できますでしょうか。
デジタルを活用し、その企業を改革するためには、企業文化や現行業務を理解し、適合したシステムや新たな業務フローを再定義する必要があります。
デジタルは単なるツールであり、そのツールを使って何を成すかが重要です。
また、変革には必ず反対派も現れますので、社内に協力する仲間(コネ)も必要になり、デジタルの知識があるだけでは企業の変革は実現できません。
高いコンサルティング費用を払って、高尚なビジョンや新たな業務フローを作っても、絵に描いた餅になってしまい、結果、社内は何も変わらなかったというのは、DXあるあるでよく聞く話です。
会社を変えるためには実行力が必要ですが、それはプロパー(新卒から採用した社員)の生え抜き社員にしか、それは担えないと思います。
ジョブ型雇用で人材が流動的な会社でそれを実現できるのでしょうか?
部分最適は可能ですが、全体最適ができない問題が残ると思われます。

 

会社を変革しようとすると、魔法の杖のようなものを欲しがります。
ジョブ型雇用さえ、導入すれば会社がより良くなると勘違いしてしまいます。

 

本当に取り組むべきなのは、これまで多くの企業が取り組んできた成果主義を、より効果的な制度になるように改善するべきなのではないでしょうか?
平等かつ会社の変革を促す成果主義を生み出すことは困難ですが、その難問から逃げてはいけないのではないでしょうか?
また、スペシャリストを正しく評価し、報酬も中途採用の市場や派遣社員の契約金額に近付ける努力を行う必要があります。
現在の人事制度のすべてが悪いわけではないと思いますので、魔法の杖を探すのではなく、今の人事制度の課題に真っ正面からぶつかって、改善するべきではないでしょうか?

 

日本の給与が上がらない問題は根が深いですね。

引き続き、次回も同じテーマで語りたいと思います。