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日本の給与はなぜ上がらないのか?⑦

お金

※写真はイメージです

これまで同じテーマで「都市・大企業」の給与が上がらないのかを検討した後、脇道にそれて「なぜ日本は生活が苦しいのか?」にテーマを変えて語ってしまっていましたが、今回は、本来の「地方・中小零細企業」にスポットを当てて考えたいと思います。

 

地方・中小零細企業」には多数の課題がありますが、給与を上げるためには、まずは企業規模の拡大が必要と思われます。
もちろん、規模の拡大のために、追加で人を雇ったり、新たな仕事を生むのは難しいため、企業合併が必要と考えています。
経済に素人の私が語っても説得力がないため、オックスフォード大学卒業後、ゴールドマン・サックスで「伝説のアナリスト」として名を馳せたデービッド・アトキンソンさんの記事を引用させていただきます。

 

toyokeizai.net

 

グローバル経済の潮流後、近年、社会や投資家の企業に対する要求が高くなっています。
海外進出、海外投資家、コーポ―レートガバナンス(内部統制)、CSRコンプライアンス、DX、セキュリティ、個人情報、SDGs、男女平等、ダイバーシティなど、企業は多面的な課題に対して責任を追わなくてはいけなくなり、良い製品を安価に生産するだけでは成り立たなくなっています。
また、グローバル化及びデジタル化による国境を超えたサービス展開により、日本国内の企業と競うだけではなく、グローバル企業とも争わなくてはならない状況となっています。

社会的な責任の重圧やグローバル競争の激化により、企業の取組むべきテーマが多岐に渡り、人材や物の不足している中小零細企業では対応しきれなくなっています。

 

また、以前にブログで説明した通り、日本企業は生産性が低いため、生産性向上やDXなどに取り組む必要がありますが、それには投資(お金)と人材が必要になります。

中小零細企業では例えばDXを取り組もうとしても、IT担当が1人しかいない企業もほとんどで(兼務で0.5人という企業もある)、リソースに余裕がなく、取組みが難しい状況があります。

生産性向上やDXなどが実現できないと、企業の収益が改善できず、給与アップにも対応できないと思われます。

 

また、同じことを言っている人が見つけられなかったのですが、企業規模を拡大することで、企業間の交渉力強化、及び新サービスの創出に対応できることが、中小零細企業に大きなメリットがあるように思われます。

企業間の交渉力強化、及び新サービスの創出に対応について、それぞれ下記に説明したいと思います。

 

■企業間の交渉力強化

全国展開している小売り vs 中小メーカー、サプライチェーンにおける下請けなどの
企業間の取引では、企業規模の大きい大手小売り・メーカーの交渉力が強く、中小メーカーや下請けは、主要取引先の言いなりにならざるを得ない状況があります。
近年、グローバル化及びデジタル化により顧客ニーズの変化が著しく、さらにはコロナ禍により実店舗の売上が下がり、大手小売り・メーカーは販売に苦戦を強いられていますが、少しでも利益を改善するために、仕入先に対してコストをカットを強く要求しています。
主要取引先の売上に依存している中小メーカーや下請けでは、取引を失うと会社の経営が大きく傾くため、薄利や赤字(将来の種まきや工場の稼働率維持などのため)であっても仕事を引き受けるしかない場合もあります。
また、グローバル化により大手小売り・メーカーは安価に製品や部品を生産できる海外のメーカーや下請けと手を組むこともできるため、国内の中小メーカーや下請けは、給与の安いアジアの工場と単価を競うことになり、給与を上げるどころか、下げることしか考えられない状況があります。

 

中小メーカーや下請けの企業規模拡大により、大手小売り・メーカーとの取引を、現在よりも有利に交渉できるように改善が必要と思われます。
中小メーカーや下請けが主要取引先1社に依存する状況だと、土下座営業のような交渉になってしまうため、企業合併により、その分野では市場を一定程度占有することにより、現在よりも立場を強くすることで、大手小売り・メーカーとの関係を改善することができます。
また、企業規模拡大により、並行して中小メーカーや下請けでもグローバル人材を育成し、海外販路を開拓することも必要になります。

 

■新サービスの創出

中小メーカーや下請けの活路として、新たなサービスを創出し、直接、顧客へサービスを提供する方法もあります。
メーカーではありませんが、動画配信サービスを提供するNetflixが、ビデオ・DVDのレンタルチェーン店「Blockbuster」を倒産させたことは、世界を驚かせました。
同様に、中小メーカーが、大手小売りが取り扱ってくれないイノベーティブな商品やサービスを、デジタルを活用し、直接、顧客へ提供する手段もあります。
下請けはこうした取り組みはできないと指摘されると思いますが、技術転用によりイノベーティブな商品やサービスを生み出す方法や、製造業(ものづくり)マッチングサービスにより新たな販路を探す方法もあると思われます。

製造業マッチングサービスのNOVELを紹介しておきます。

 

n-v-l.co

 

もちろん、新たなサービスの成功のためには、投資及び市場の一定程度の占有が必要になりますので、企業規模を拡大しないと実現が難しいと思われます。

 

マーケティングデータ収集

中小メーカーや下請けもデータドリブン経営に対応する必要があります。
中小メーカーは顧客の情報を直接取得することができず、個別のアンケートなどで市場調査を行っていますが、情報収集の規模が小さく、不確定の情報から新製品の検討を行わなければいけません。
中小メーカーの中には、技術力は高いものの、技術者目線で新製品を開発してしまい、
市場に受け入れられないケースもありますので、ビックデータによるマーケティング分析は取り組まなければいけない喫緊の課題だと思われます。
ECサイトやIoTにより顧客のデータを直接入手し、蓄積したビックデータを活用し、次なる商品やサービスを検討する際の材料に活用する必要があります。
少ないデータでは正しい分析ができませんので、企業規模を拡大し、ビックデータの収集・蓄積が必要となります。

 

■新技術の取組み

中小メーカーや下請けが革新的な技術で商品や部品を作っても、大手小売りが店舗で売ってくれず、大手メーカーが親技術を取り入れた機能を企画しないと部品を購入してもらえず、技術革新が進まない問題もあります。
日本の半導体の凋落は、半導体メーカーが大手電機メーカーの子会社で、先進的な商品を生産していない親会社への納品のため、新技術の創出よりも、コストカットを優先しました。

また、トヨタも同様に半導体メーカーに対して新技術よりも、旧技術で生産した半導体のコストカットを要求しました。

こうした主要取引先の要求により、世界と比較し、日本の半導体メーカーの技術革新が遅れたことが、日本の半導体の凋落の一因と思われます。

 

上記の通り、中小零細企業が様々な課題に対応するためにも、企業規模を拡大し、既存の大手小売り・メーカーとの取引だけではなく、マルチチャネルにより販売を拡大する必要があるように思われます。

それが結果的に生産性向上や収益拡大に実を結び、従業員の給与アップにもつながるように思われます。

 

ちなみに、前述の新サービスやマッチングサービスの需要や市場はまだ少ない状況ではありますが、将来的な投資として今から活用するのも手と考えております。