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オンキヨーの終焉とこれからの音楽について②

スピーカー

※写真はイメージです

 

前回、2022年5月13日に「オンキヨーホームエンターテイメント」が破産したことをきっかけにして、これまでのオンキヨーの振り返りや音楽業界について語りました。
今回は、オンキヨーの倒産と関連した話題として、パイオニアギブソンについて補足したいと思います。

 

■パイオニア
イオニアは、1938年に創業して80年程度、老舗の音響機器メーカーとして多くの人々に親しまれてきました。
初の純国産ダイナミックスピーカーを開発して起業し、スピーカーの技術力が評価され、オーディオ御三家と呼ばれて、オーディオファンからは「スピーカーのパイオニア」で親しまれていました。

 

1970年代末に、パイオニアは、ビデオディスク規格競争においてレーザーディスク陣営を勝利に導き、レーザーディスクにより一世を風靡しました。
令和の時代では、レーザーディスクは余り流行らなかったように思われていますが、実は、当時、カラオケを中心に1,000億円を超える出荷金額を記録し、パイオニアの業績に大きく貢献しました。

 

また、パイオニアは、多くの世界初の商品を手掛けましたが、その中でも、1990年に発売したGPS搭載のカーナビ「カロッツェリア」が有名です。
カロッツェリア」は高音質でもあったことから、車で大音量で音楽を楽しむ人たちに好まれていました。
個人的にも、若気の至りですが、「カロッツェリア」でハードロックを爆音で聴きながら、ドライブを楽しみ、大変お世話になりました。

 

その後、2000年代にはプラズマテレビなどの家電で攻勢をかけましたが、液晶テレビとの価格競争が激化し、経営が苦しくなっていきます。
また、プラズマテレビには巨額投資が必要で、資金も続かず、2008年にプラズマテレビは自社生産からの撤退を発表し、テレビ事業からも完全撤退しました。

 

その後、2015年にオンキヨーへホームAV機器を売却し、カーナビなどの自動車事業への集中を図ることで、再起を目指しました。
社運をかけた自動車向け機器への集中でしたが、スマホタブレットをカーナビとして代用する人が増え、市販カーナビの需要が縮小し、販売が落ち込みました。
また、ディスプレイオーディオ(ナビ機能はスマホを代用)も普及し、販売単価が下がり、カーナビ市場は価格競争が激化しました。


2018年、自動車向け事業は55億円の営業赤字に転落し、2019年に上場廃止となり、自力再建は難しいと判断し、香港の投資ファンド「ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア」の完全子会社となって再建を目指すことになりました。

 

ギブソン
さて、ロックファンの間では、ギブソンと言えば、誰でも欲しがる有名なギターメーカーになります。
エルビス・プレスリージョン・レノン、レッドツェペリンのジミー・ペイジ、ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュなど、数多くの有名ミュージシャンに愛されたギターのメーカーであるギブソンが、2018年に事実上の経営破綻となりました。

 

経営破綻に至った原因としては、ギブソンのギター事業は黒字でしたが、経営の多角化のため、各社を買収し、新たなビジネスとして家電事業に乗り出しましたが、ギブソンには新分野でのノウハウがなく、シナジー効果を出せず、経営難に陥ったと言われています。

実は、各国の企業買収の際、「オンキヨー」も買収していますが、2017年にギブソンが経営難に陥ると、オンキヨーの株式を売却し、オンキヨー側では減損損失を計上することになりました。

 

ちなみに、経営破綻となった2018年に、コールバーグ・クラビス・ロバーツ傘下となり、ギブソンの再建が進められていますので、ギブソンブランドは存続してします。

 

音楽業界の中で、リスペクトを集めていたギブソンオンキヨーの両社ともに、経営破綻した理由としては、この現代では、音楽の楽しみ方が変わったのだと思われます。
コロナ禍もあり、自宅でギターを演奏する人が増えていると言われていますが、お手頃価格のギターを購入するケースが多く、また、ギター代よりもレッスン代により費用を掛けていると言われています(モノからコトへのシフト)。
本格的なギターの音色を楽しむよりも、YouTubeなどに演奏をアップロードしてコミュニケーションを楽しむ時代になったのだと思われます。
現代の若者の音楽の楽しみ方が変わったことは、より音楽が身近になるということだと思いますので、歓迎すべきことだと思います。
従来のレコードやCDを大量に生産後、強行スケジュールで各地でライブを行ってプロモーションするビジネスモデルは、商業的成功に苦しんだニルヴァーナカート・コバーンの葛藤も生み出し、マイケル・ジャクソンから多感な少年時代を奪いましたので、全てが良かったわけではないと思います。
個人でパソコンにて音楽制作できる時代になり、インディーズのすそ野が広がりましたので、ショー・ビジネス界と切り離した純粋な音楽が出てくることを期待しています。

 

――とは言え、昭和生まれの私は、時代の変革に一抹の淋しさを感じてしまいます。
グランジ、裏原系、ブリットポップオルタナティヴ・ロックなどのブームは、良くも悪くもその時代の音を形作っていましたが、こうしたムーブメントはもう来ないのだろうと思います(これからは、個々人が自分が好きなジャンルの音楽を制作)。

さて、最後に、ビジネス視点での考察を行っておきます。現代の音楽の楽しみ方の変革に追い付いていけなくなったのが、オンキヨーギブソンの破綻につながったと思いますが、オンキヨーは若者や環境の変化に対応するため、両利きの経営に取り組み、新たなサービスで活路を見出そうとしていました。
(両利きの経営の詳細については、「日本の給与はなぜ上がらないのか④」をご参照)
両利きの経営を行っていたものの、肝心な既存ビジネスが先細り、新規ビジネスも国内需要と合わず、グローバル市場に攻め込む資本力もなく、倒産する結果となりました。

 

日本では、他にもドコモがiモードなど、イノベーティブなサービスを先行者として行っていましたが、後発のGAFAによって淘汰されました。
激動の令和時代の中で、企業が存続し発展するためには、両利きの経営は必須条件になりますが、さらに、プラットフォーマーとなるために、グローバル化への対応と、経営統合や企業買収などによる規模の拡大が必要なのでしょう。
サービスを始めたばかりでシェアが低いながらも、イノベーティブなサービスで努力している企業が、後発の資本の力でものを言わせる企業に淘汰されていくのは、淋しい思いがします。
近年、GAFAのような企業を生み出すために、日本企業は変わらないといけないと言われていますが、初めはイノベーティブな企業であったGAFAが、ただの巨大財閥になり果て、大資本によりスタートアップの買い占めを行い、市場を占有しようとしているように見えます。
GAFAには倫理的な問題があるようにも思いますので、お手本とするのが正しいのかは一抹の疑問を感じえません。
締めとして、日本ではこの点の議論が少ない気がしますが、「GAFAを標的にした反トラスト法改正案、米下院議員らが発表」の記事を引用して終わりたいと思います。

 

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