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オンキヨーの終焉とこれからの音楽について①

スピーカー

※写真はイメージです

2022年3月28日、老舗のオーディオ機器メーカー「オンキヨーホームエンターテイメント」の連結子会社であるオンキヨーサウンドオンキヨーマーケティングが、大阪地方裁判所へ自己破産を申請して倒産しました。
また、2022年5月13日、親会社の「オンキヨーホームエンターテイメント」も、大阪地裁に破産手続き開始の申し立てを行い、同日付で破産手続開始決定を受けました。
オンキヨーブランドの歴史は、1946年9月の誕生から75年7か月の歴史に幕を閉じることとなり、同じくAV機器ブランドとしてのパイオニアブランドの歴史も、1938年の誕生から84年の歴史に幕を閉じることとなりました。

 

念のため、補足しておくと、2014年に、オンキヨーはパイオニア保有するパイオニアホームエレクトロニクスの全株式を譲受し、パイオニアのAV事業を吸収分割により承継させ、両社のホームAV事業を統合しています。
今回の倒産で、結果的に日本の老舗のオーディオ機器ブランド「オンキヨー・パイオニア」の2つの歴史に幕を閉じたことになります。

 

オンキヨーのスピーカーは、繊細でクリアな高音域を奏でることができ、世界中で多くの愛好家が生まれるなど高い技術力に定評がありました。
イオニアのスピーカーは、音質の高さが有名で、世界にも名前を広めたメーカーで、低音から高音までバランス良く鳴らすことができます。
いずれも、スピーカーの技術力が高く、世界中からリスペクトを集めていた会社ですが、今回の倒産で歴史に幕を閉じる結果となりました。

 

実は、長年、私はオンキヨーのファンで、色んな商品を購入していました。
高音質な機器は高価なものが多いので、リーズナブルな商品を中心に購入していましたが、それでも他のメーカー以上の音質で音楽を聴くことができました。
オンキヨーギブソン(後で書きます)の経営破綻は、時代の流れによるものではありますが、非常に淋しい思いをしています。
その思いを胸に抱きつつ、少し各社の過去を振り返りたいと思います。

 

オンキヨー
オンキヨーはジャズやクラッシック向けの高級スピーカーを販売していた企業と思われていますが、早い段階からデジタル分野に参入し、先進的なサービスの提供に積極的に取り組んでいました。

 

2005年という早い段階から、音楽配信サイト「e-onkyo music」を設立し、ハイレゾのサービスの提供を開始しました。
当初、10曲のみだったe-onkyo musicは、後に国内最大級のハイレゾ音源配信サイトとして成長します。

 

また、2009年にも、ソーテックを買収し、原音レベルの音楽記録・再生を実現するパソコン等、コアな音楽ファン向けの商品を提供していましたが、大ヒットには結びつきませんでした。

 

また、2013年に、スマホアプリ「HF Player」をリリースし、充実したイコライザーにより、再生能力の低いスマホでも、e-onkyo musicから曲をダウンロードし、割と良いイヤフォンを使えば、それなりの音質で楽しむことができるようになりました。

念のため、知らない人に補足をしておくと、スマホをPC接続し、自分が所有しているmp3ファイルをコピーすると、アプリ「HF Player」でmp3を楽しむことができます。

 

イオニアホームAV事業との統合後、共同開発により、2015年に第一弾のデジタルオーディオプレーヤー(DAP)を発売します。
高品質なアンプを使い、ハイレゾに対応するとともに、mp3ですら良い音で再生でき、玄人から一般ユーザーまで、誰もがその音質を認める商品でした。

 

■デジタルオーディオプレーヤー(DAP)

日本では、mp3プレイヤーとしてiPodが流行しましたが、ちょうど今月(2022年5月)に生産中止となり、現在では、iPhoneで音楽を聴く人が増えているのだと思われます。
iPodの洗練されたデザインにより日本では大ヒット商品になりましたが、iPodiPhoneのいずれも音質が悪く、高音域をカットされた劣化したmp3やストリーミングを聴くのであれば、問題ないかもしれませんが、本格的に音楽にこだわって聴くには不向きでした。

 

オンキヨ―が発売したDAPは、前述のとおり、高音質で再生可能ですが、それだけではなく、SIM搭載によりネットに接続でき、各種アプリも利用でき、スマホとしても販売されていました。
実際にはスマホとしての機能のニーズがなく、価格が高いため、販売数を大きく伸ばすことができませんでした。

 

CMやお洒落なデザインにより、日本ではiPodが市場を席捲しました。
iPodは音質が悪い弱点があったものの、カラオケが流行っている通り、日本人はボーカルのメロディーがクリアに聴ければ満足であり、それよりも手ごろな価格で購入できる方が、顧客を惹きつけたと考えられます。
また、良い音質で聴くためには、音楽プレイヤーよりも、まずイヤフォンの方が重要で、高品質のイヤフォンを利用しているコアな音楽ファン以外には、音楽プレイヤーの音質の違いは伝わらかったことも、オンキヨーの高価なDAPが販売数を延ばすことができなかった理由と思われます。

 

ハイレゾ
現在、日本では、ハイレゾが流行らないのではないかと言われています。

 

ハイレゾとはサンプリング周波数が44.1kHz(CD)以上の音源で、CDと比べて約6倍ほどの情報量のため、高品質な音質で音楽を再生できます。
ダウンロードやストリーミングで数多く採用されているmp3は高音域がカットされてしまい、音がかなり悪くなってしまいますが、ハイレゾなら高い音質で音楽を楽しめます。
音楽ファンにとって、ハイレゾは新たな体験を提供するサービスとなりますが、日本での有料のハイレゾ音源の販売は、期待を超えるものになっていないようです。

 

日本で有料ハイレゾが流行らない理由としては、若者は前述の通り、iPodiPhoneで、ダウンロードやストリーミングによりmp3を聞いている人が多いですが、音質が悪くても、特に気にせず、音楽を楽しんでいます。
CDの販売が落ち込む一方、ダウンロードやストリーミングの有料サービスは売上を伸ばしていますので、音楽自体を楽しむ人は減っていませんが、音質にこだわった聴き方は減少しています。

 

また、音質にこだわりを持ち、お金を掛ける中高年世代は、ハイレゾを聴くためのデジタル機器に疎く、デジタルに対する抵抗感もあり、販売が進んでおりません。
元々、アナログ(レコード)ではCDのように44.1kHz(CD)以上をカットしておらず、音質が良いので、満足している側面もあります。
また、ハイレゾを始めるためには、すでにAV機器やレコードを揃えているのに、さらに、デジタル機器とハイレゾ音源の再購入費用の再投資が必要で、ハイレゾに興味があっても、購買行動まで至らないのだと思われます。

 

また、ハイレゾには、ニセレゾと揶揄されている品質の悪い音源がある問題もあります。
厳密には、レコーディングからミキシング、マスタリングまで全てハイレゾで行わないと、本来のハイレゾレベルの音質にならない可能性があります。
実際には、2000年以前の非ハイレゾの原盤を、リマスターしたものをハイレゾとして販売しているものもあります。
それをハイレゾと呼んで良いのかと疑問を呈する人もいます。

ただ、個人的には、古い音源をリマスターしたものも、過去の遺産を現代の最新の技術で高音質化を図っているという点では、意義があるように思います。

当時は、良い機材がなく、ミュージシャンやエンジニアの妥協の中で作られた音源もあるかもしれませんので、過去の名作を新たに甦らせるという点では評価されるものだと思います。
ただ、リマスタリングは出来、不出来があるので、原曲やミュージシャンの意向に合わせたリマスタリングを行ってほしいものです。

 

また、このリマスタリングに関しては、非常に難しい問題もあります。
ビートルズのリマスターが流行った時期に、リマスターそのものに関する問題提起がありました。
ビートルズのリマスターは、マスタリングに留まらず、各トラックに分割し、音を調整し直して、リミックスしたと言われています。
リミックスやリマスタリングにより、アナログレコード並み、もしくはそれを超えた音質となり、ブレスや個々のコーラスの声なども聴き分けられるようになり、音の奥行きも表現され、全体の音のバランスも調整されています。
また、ビートルズのリマスターはエンジニアがかなり気を使っていて、ミュージシャンや原曲の意向にも配慮した素晴らしいリミックス及びマスタリングでした。

ただ、それが音楽として価値のあるものなのかは、個人の判断に分かれ、自分の子供の頃から知っているビートルズの音楽じゃないという意見もあります。
中高年世代の一部は、安いラジカセや、カーステレオのラジオで聞いたのが、ビートルズの原体験であり、音質が悪くても、その悪いことも含めて、ビートルズの曲に感動しました。
ビートルズの音楽は曇った音が混ざり合って、平面的なサウンドで、パワフルな点が魅力なのだという人もいるのでしょう。
音が良ければ、より音楽が楽しめるのかは、誰も答えが出せない課題になります。

また、ビートルズのリマスターは、エンジニアがミュージシャンや原曲の意向に配慮したリミックス及びマスタリングでしたが、通常のハイレゾリマスタリングは、ミュージシャンが関わっていないケースも多いので、その意向を汲んでいないリマスタリングは、ビートルズ以上に批判を受けると思われます。

 

ちなみに、私はビートルズのリマスター版を購入して、素晴らしい音質に感動した派です。
個人的には、亡くなった好きなミュージシャンも多いので、価格が安ければ、過去の名作をリマスタリングすることに賛成します。

 

――さて、今後、ハイレゾはどうなるのでしょうか?
ハイレゾソニーが名付けた用語なので、海外ではそのような基準がないですが、GAFAが高音質の音源の提供サービスを開始しています。

 

Amazon Musicでは、これまでダウンロードやストリーミングでmp3などの劣化した音源を提供していましたが、Amazon Music HDというCDと同レベルの音質の提供を始めました。
まだ、ハイレゾレベルの音質ではありませんが、その内、提供するようになるのではないかと考えています。

 

また、Apple Musicでは、ロスレスオーディオとハイレゾロスレスオーディオの提供を行っています。
ロスレスオーディオはCDと同レベルの音質で、ハイレゾロスレスオーディオはハイレゾレベルの音質になります。
Apple Musicの利用には月額の費用が掛かりますが、入会すれば、ロスレスオーディオとハイレゾロスレスオーディオは追加費用なしで利用できます。

 

日本企業にはイノベーションが必要と言われている昨今ですが、設立当時から変わらず、オンキヨーは新しいことにチャレンジしてきました。
先行者利益を得るはずなのに、後発のGAFA資本力やグローバルの販売網を活用して、先行者を淘汰しようとしています。
経営者の判断が悪かったと言ってしまえば、それまでですが、独立禁止法に抵触する可能性もありますが、オンキヨーソニー合弁会社を作って、日本のプレイヤーを一本化し、日本全体でグローバルに対抗することができなかったでしょうか。
ハードからソフトにシフトする中で、漫画やアニメといったソフトに強いと言われている日本が、ハイレゾの発信国になれなかったのかと、個人的に悔みます。

 

長くなりましたので、いったんここで区切りたいと思います。

次回はパイオニアギブソンについて語りたいと思います。