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ChatGPTとは何か?②

デジタル

※写真はイメージです

ブログに別の話題ばかり掲載していましたが、今回は、改めて自然言語AI「ChatGPT」の続きを語りたいと思います。
いつも通り、ChatGPTのあまり語られていない側面を検討したいと思います。

 

ChatGPTは何が「すごい」のか?

日本のパソコン好きの間では、まるで人と接しているかのようなチャットで、すごいと騒がれています。
これは私生活の遊び範囲で、ChatGPTを利用するのには良いですが、チャットボットでもある程度、楽しめていたので、それほどインパクトがないように思われます。

 

また、各企業がChatGPTを活用しようとしていますが、プロンプト(ChatGPTに投げかけた質問)のデータが、AIの再学習に利用される可能性があり、セキュリティの問題から、企業内でのChatGPTの利用を見送っているケースも数多く存在しています。
(ちなみに、API経由の場合は再学習されないため、一部の企業や地方公共団体などでは内部でAPIを実行するアプリを活用し始めています)

 

また、ChatGPTは、幅広い、数多くのデータを学習しているため、一般的な回答しかできず、一歩、踏み込んだ議論が行えません。
ChatGPTを社内の業務に活かすためには、業界知識・専門知識・社内ルール等、社内にしかない情報をAIに追加で学習させる必要がありますが、今のところはそのようなことができない状況です。

 

それでは、ChatGPTは何がすごいのでしょうか?

 

世界中でChatGPTが熱狂的に騒がれているのは、エンジニアが中心だと思われます。

シリコンバレーでは、日夜、ChatGPTで何ができるのか、エンジニアの集会が開催され、技術情報の交換を行っているようです。
エンジニアがChatGPTに注目したのは、APIに対応したからだと思います。

 

APIとはアプリケーション・プログラミング・インターフェースの略称で、異なるソフトウェア間でのデータのやり取りを行うための仕組みです。
システムにあまり詳しくない人には分かりにくいかもしれませんが、Googleマップが分かり易いかと思います。
例えば、食べログではお店の場所をマップで確認できますが、Googleマップの公開APIを実行することでマップ表示に対応しています。

 

cloudapi.kddi-web.com

 

それでは、ChatGPTのAPIを活用し、他のシステムと連携することで、どのようなことが実現できるでしょうか。

 

■サポート対応

利用者から製品やサービス等への多数の質問が届くが、ChatGPTのAPIを活用し、自然な言葉で自動回答

※チャットボットで対応可能との指摘があるが、チャットボットは事前に回答パターンを網羅的に用意しておき、返答しているだけ(自然な返答ができない)

 

■システムやIoTデバイスとの連携

ChatGPTのAPIを活用し、システムやIoTデバイスと自然な言葉でやり取りが可能

例えば、パソコンのマイクから「今月の売上を教えて」と指示するだけで、売上レポートを自動作成
また、スマート工場の場合、マイクからの指示で製造機械を動作・停止

 

■パーソナライズドマーケティング

顧客の購買履歴や嗜好データを元に、ChatGPTのAPIを活用し、顧客向けの広告メッセージを自動生成
※現状でもパーソナライズメッセージに対応可能だが、事前に定型文を用意しておくケースが多い

 

上記の活用例でお分かりの通り、ChatGPTは人間とのコミュニケーションの部分で強みを発揮することができます。
システム用語では、人間とのコミュニケーション機能をUI(ユーザー・インターフェース)と呼んでいます。

 

これはWindowsというGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)のOSを開発したビル・ゲイツ氏が、ChatGPTに注目していることにも関係していると思います。
ChatGPTのデモを見たビル・ゲイツ氏は、以下のようなことを言ったそうです。

 

ビル・ゲイツ氏のコメント

これまでの人生で、革新的と感じた技術のデモンストレーションを2つ見た
1つは、世界初のGUIのOSであり、もう1つが、OpenAIの「ChatGPT」だ

 

当初、パソコンはMS-DOSという黒い画面に、コマンドを入力して利用していましたが、1980年に、Microsoft Windowsが登場し、GUIでパソコンを操作できるようになり、パソコンがビジネスや生活の中に一気に普及していきました。
GUIの登場によりパソコンが民主化され、生活や仕事が大きく変わりましたが、その変革の一翼を担ったビル・ゲイツ氏が、ChatGPTに最大級の賛辞を送っているのは、ChatGPTもGUIと本質は同じで、今回はAIの民主化が起こるのだと思われます。
従来、AI利用のためには専門のデータサイエンティストに依頼し、コーディングやチューニングなどを行ってもらい、やっと利用することができましたが、ChatGPTのAPIにより、人とAIやシステムをつなぐことができるため、誰もが普段利用するアプリの中で、AIを利用できるようになるのが革命的なことなのだと思われます。

また、APIを活用することで、社内の情報もChatGPTに学習させて、まるで自社の社員のように振舞わせて回答させることも可能となっています(プロンプトからの取込やファインチューニングにて対応可能)。
現代のビジネスにおいては、各企業が数多くのシステムを利用して実務を行っており、システムなくしてはビジネスが遂行できない状況になりつつあります。
従業員はシステムを動かすために、ボタンをクリックしたり、値を入力したりしていますが、それは人とシステムがスムーズにコミュニケーションできるインターフェースがなかったため、システム上での面倒な作業を行っていました。
今後は、ChatGPTの登場により、人が普段話す言葉でシステムを動かすことができるようになれば、面倒なシステム操作から解放され、仕事や生活が劇的に変革される可能性があります。

 

このような変革の兆しは、Microsoft 365 Copilotに見て取れます。
Microsoftが発表した内容のサマリーは以下になります。

 

■Word

作成したいドキュメントのイメージをCopilotにチャットで指示すると、自動的に文書を作成

 ■Excel

チャットで指示するだけで、売上データをまとめてくれる

 
■Teams(チャットやリモート会議ツール)

リモート会議の決定事項やタスク等のサマリーを議事録として自動作成

 

詳細はMicrosoftの記事をご覧ください。

blogs.windows.com

 

Copilotとは副操縦士という意味ですが、上記機能の通り、まるで秘書付きで仕事ができるようになります。
初めは、自動生成の文章がそのままではビジネスに活用できないレベルなど、あまり精度が出ないかもしれませんが、現在の技術革新のスピードを考えると、リリース後も次々に改善が行われ、近い将来、本当の秘書のようなサポートができるようになるかもしれません。

 

Microsoft 365以外にも、同じMicrosoftですが、GitHub(ソース管理ツールとしてデファクトスタンダード)でもChatGPT技術を活用し、Copilotというコーディング支援機能(一部のコードからの予測表示・コメントのコード変換等)をリリースしました。
Salesforce(営業管理ツールとしてデファクトスタンダード)もChatGPT技術を組み合わせることで、生成系AI「Einstein GPT」に対応することを発表しました。

 

現代のビジネスでは、Microsoft 365(Office)等のアプリなしではドキュメントが作成できず、メールの1つも送れず、仕事ができなくなりました。
仕事で普段から利用しているアプリが、ChatGPT活用により機能改善を行うことで、世界中の誰もが仕事のやり方を大きく転換することになるでしょう。

そして、新技術の導入に時間が掛かったり、対応できない企業は、世界の新しいビジネスのスピードから、大きく遅れを取ってしまう可能性があるように思います。

 

当たり前(スタンダード)の技術とは?

仕事する上で、一度もGoogle検索を利用していない人は皆無と思われます。
ググるという造語もできてしまったように、Google検索は一般化しました。

 

Google検索の便利性が浸透する中で、多くのアプリでも、Google検索のような検索機能の対応に迫られました。
Amazonで欲しい商品を検索し、Uberで飲食店を検索し、Netflixでは映画やドラマ等が検索し、普段の生活でも検索がスタンダードになりました。

 

アメリカや中国が中心となってAIの論文が発表されており、GoogleMicrosoftといったビックテックが次々と最新技術を生み出しています。
このような最新技術が、ChatGPTの活用により普段使いできるようになることで、ITリテラシーが高くない国でもAI活用が進むようになります。

検索機能が広まりスタンダードとなったように、自然言語AIも世界中に広まる中で、蛇口をひねればすぐに出る水のように、いつでも、どこでも、誰もが当たり前に使えるようになる時代になるのだと思われます。
そうして将来的には、車で移動するようになった後は、馬車の時代に戻ることができなくなったように、しだいに、私たちも自然言語AIが当たり前になった社会から戻ることができなくなる時代に突入するのでしょう。

 

また、このように自然言語AIが当たり前になった世界では、パッケージメーカー(システム提供している会社)は、ChatGPT対応のシステムとChatGPTに未対応のシステムのどちらを提供するかで、明暗が別れていくと予想されます。
例えば、SFAのツールとしてSalesforceが40%(2022年のボクシル編集部の調査を参考)を占めていると言われていますが、SalesforceがChatGPTの技術を取り込むことで、利便性が劇的に向上し、他のSFAでは満足できないユーザが増え、さらにSalesforceがシェアを伸ばすことが予想されます。
資本力(新機能の開発費用が必要なため)と技術力を持った一部の企業だけが、ChatGPT対応のシステムを提供することで、未対応のシステムを一時代前のものとして、置き去りにしていくと思われます。
また、当たり前の検索や自然言語AIの機能を備えていないシステムが利用されないようになることで、スタートアップ(ベンチャー企業)が新システムを初期開発する際のコストが高くなり、新規参入の障壁となり、既存システムの占有を盤石にするように思われます。
(現在、Windows牙城を崩すOSは現れにくい状況となっています)
ちなみに、デファクトスタンダードとしてChatGPTを提供するMicroSoftは、Windowsと同様に莫大な収益を上げることになると思われます。
日本のパッケージメーカーは、すぐにでもChatGPTに対応しなければ、海外システムの日本語版が日本のシェアのほとんどを奪う恐れがあるように思います。

 

なぜGoogleは対応が遅れたのか?

補足として、Transformerという技術を生み出したGoogleは、なぜ自然言語AIへの対応が遅れたのかを語っておきます。

 

TransformerはGoogleが発明したAI技術になりますので、以前からGoogle社内でChatGPTのようなアプリは開発されていたと言われています。
ただ、検索の広告表示で莫大な収益を上げていますので、検索の利用及び収益を低下させる可能性のある自然言語処理AIの提供には消極的だったのではないかと言われています。
ご存じのとおり、Yahoo!Google検索エンジンを採用していますので、検索サイトとしてGoogle及びYahoo!を合わせると、利用者は全体の90%(2022年)を占めていると言われています。
2021年1~3月期決算では、Googleの広告事業は446億8400万ドル(YouTubeなどの広告収入も含む)の売上を達成しており、ドル箱状態の事業に対して、冷や水を浴びせるようなシステムのリリースは行わなかったと考えられます。

 

ChatGPTの一般公開により、世界中で自然言語処理AIのブームが訪れてしまい、本家のGoogleも焦って、対話型AI「Bard」という検索機能を無償提供することになりました。
とはいえ、時間がない中の急ごしらえの準備であったため、発表時のデモで、Bardが誤った回答をしてしまい、アルファベット(Googleの運営会社)は時価総額を1000億ドルも下落させることになりました。

 

■質問

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による発見を教えてください

 

■Bardの回答

初めて太陽系外の惑星の画像を検出することに成功

 

■正しい回答

地球から40光年離れた太陽系外の惑星からの光を検出することに成功
世界の天文台が太陽系外の惑星を発見したのは、初めてではない
(2004年の欧州南天天文台の超大型望遠鏡が撮影した画像が初めて)

 

それにしても、個人的には、これは一時的な状況だと考えております。
収益の根幹が揺らぎかねない状況の中、スターエンジニアを有するGoogleは社を上げて改良にいそしむことで、ChatGPTに対抗可能なサービスを提供すると思われます。
いずれにせよ、アメリカのビックテックが最新技術を提供し、日本はそれを利用するだけの立ち位置に甘んじることで、これからもアメリカと日本の経済格差は広がる一方になるように思われます。

 

私たちの仕事はなくなるのか?

 

将来の私たち日本人の仕事はどうなるでしょうか?

 

ChatGPTの出現により、ホワイトカラーの仕事はクリエイティブな部分のみになると言われていますが、前回、語った通り、全ての人たちが創造性を持っているのかは、一抹の疑問を感じます。
芸術家ですら、まったくの無から何かを生み出していないのであれば、なおさら、一般人では新しい学識や芸術などを生み出すことは難しいように思われます。

 

また、会社員の中で、クリエイティブな仕事をしている人は、ごく一部だと思われます。
仕事の中で、一見クリエイティブに思えるものも、クリエイティブなものではないものも多く、例えば、Webデザイナーもデザインを検討する一部の作業はクリエイティブですが、実際にはWebページの設定やコーディングなどに多くの時間を費やすため、全体としてはクリエイティブな仕事と言い切れないようにも思えます。
また、Webデザインの仕事も、クリエイティブな作業に携われるのは、一部のデザイナーのみであり、他のサブ担当や制作者などの多くは、デザイナーの指示の下、作業を行うだけであり、将来的には代替えが可能となると思われます。
この変革が極端に進んでしまうと、Web制作の会社であれば、社内に少数の有能なデザイナーだけがいれば良く、他の人は不要になってしまい、ホワイトカラーの仕事がなくなるという悪夢は現実のものになる可能性があります。

 

とは言え、ここまで極端な世界に進むには、相応の時間が掛かるものと思われます。

 

遠い未来のことを考えても仕方ありませんが、さて、このような極端な世界では、クリエイティブな仕事以外には、どのような仕事が残るでしょうか。

 

経営者はクリエイティブな仕事として残るものとして、それ以外の1つとしては、人と人の間の調整や交渉が必要なケースになります。
プレゼンテーション(想いを込める等)、ディベート、信頼関係構築、マネジメント等が該当するように思います。
また、企業や業務などの改革・改善などは、人が判断して行う必要があります。
改革・改善の施策の検討は人が行いますが、その施策の実行に関しては、AIが支援を行うことができるでしょう。

 

また、AI自体を運営を担当する人も残ると思います。

・AIシステムの運営・維持
・AI機能の追加・改善
・AIに学習させるためのデータの作成
 (上記は広い意味で、研究開発も含む)

 

上記の仕事に残れないホワイトカラーは、賃金が低下するかもしれませんが、エッセンシャルワーカーに転職するしかないかもしれません。

 

このように将来、社会が変質することが目に見えている状況にもかかわらず、日本の教育は、暗記型から脱却できておりません。

日本のニュースでは、学校の課題をChatGPTで自動生成してしまうことが問題視されていますが、個人的には学校側のチェック体制は学内で話し合えばよいだけで社会問題にする必要もなく、それよりも、新たなAI時代に子供たちにどのような教育を提供するのかが重要と考えています。
学校も暗記型から思考型への変革を少しづつ行っていますが、牛の歩みとなっています。

なお、小・中学校の教師は熱意もあり、教育の改善に熱心ですが、日本は、大学が問題であり、普段研究などを行っている教授が、片手間に授業を行うだけで、社会に出て役に立つ知識はほとんど提供されません。

また、高等教育の大学ですら、黒板に書いた内容を暗記するだけで、試験で点が取れるようになっています。
このまま暗記型の教育が続けば、クリエイティブな若者は育たず、日本は世界から取り残されるように思われます。

 

今回は救いのない話を書いてしまいましたね。

私のこのような予想が、現実のものとならないのように努力する必要がありますが、自分に何ができるのかを振り返っても、すぐに打ち手に取り組むことは難しく、まずはブログに書いて少しづつ多くの人に問題意識を持ってもらうことから始めないといけないように感じます。