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日本の給与はなぜ上がらないのか?⑨

お金

※写真はイメージです


これまで、日本の給与はなぜ上がらないのかについて語ってきましたが、第9回目になります。
長いですが、まだまだ語り切れませんね。

 

さて、日本の給与を上げるために、私が言うまでもなく、当たり前ですが、日本企業と労働者の変革及び成長が必要です。
特に「地方・中小零細企業」を変革し、生産性向上や業務効率化を実現する必要があります。

 

とは言え、「地方・中小零細企業」はリソース(人・物・金)が不足していますので、変革を行うことが難しいと思われます。
変革のヒントとして、「キュウリ農家のAIによる自動選別装置」の事例を紹介させていただきます。
特殊な事例なので、こんなことは自分たちにはできないという意見があると思いますが、まずは内容をご覧ください。

 

agri.mynavi.jp

 

元々、組込系エンジニアであった小池誠さんは、家業を継ぐことになり、それまでの経験を生かし、農業のスマート化に取り組みました。
キュウリ農家の事例は、個人レベルでも、AIを活用してイノベーションができた事例としてもてはやされていますが、普通の農家では技術力がなく、このような取り組みは難しいと思われますので、これは一例と考えて頂ければ良いと考えております。
また、AIなどの目新しいデジタル技術を活用しなくても、業務を改善することができますし、ありふれたツールを活用して小さな改善を積み上げることも大切です。

 

GAFAなどのプラットフォーマーが世界経済を席巻していく中、日本でもDXによる変革が叫ばれています。
DXにより顧客体験(CX)が変革される言われていますが、Amazonで本を購入したり、iPhoneで電話したり、遠い異国のGAFAにより、以前とは、日本の私たちの生活すら変わりつつあります。
こうしたデジタルによる変革が続くと、今後、世界はどのように変容するのでしょうか。
将来のデジタル社会の変容について、筑波大学図書館情報メディア系准教授の落合陽一さんの記事を取り上げたいと思います。

 

ch.nicovideo.jp

 

落合陽一准教授はメディアアーティストとして、社会学的な側面から、将来のデジタル社会の姿を予言されていますが、世俗に生きる私は、この変革の予言を、自分のビジネスにどのように生かせるのか考えたいと思います。
落合陽一准教授は「デジタル発酵」という言葉で、地方で自然発生的にデジタルのプロダクトやサービスが生まれることを予言していますが、ビジネス上の重要なポイントとしては、中小零細企業個人事業主でも、費用を掛けずに、デジタル技術を活用し、
プロダクトやサービスを自然に生み出せるようになるといった点になります。

 

少し補足すると、近年、OSSオープンソースソフトウェア)と無料サービスが増え、お金を掛けずにデジタルを活用することができる状況になりつつあります。

 

OSSオープンソースソフトウェア)

OSSオープンソースソフトウェア)とはソースコードが公開されていて、誰でも無償で自由に利用できるソフトウェアのことです。 

 

OOSの代表格としては、Apacheソフトウェア財団が有名ですが、Apache HTTP Server(Webサーバ)を筆頭に、Tomcatアプリケーションサーバ)、Hadoop(ビックデータ)、Spark(ビックデータ)などをOSSとして提供しています。
最近、ビックデータがバズワードとして注目を浴びていますが、Hadoopによりビックデータを分散処理することが可能です。
また、非構造化・半構造化データ(Excelの列が定義されていないデータ)も管理できますので、IoTなどのセンサーの情報をそのままHadoopに保存して管理できます。
また、Hadoopは専門の技術者ではないと扱えない問題がありますが、Sparkの登場によって、PythonR言語SQLという分かり易い言語で、データを取り扱うことができるようになりました。

 

OSSにおいても、企業が利用する場合には一定のルールに則って利用する必要がありますが、Apache licenseは柔軟なライセンス条件になっており、企業でも活用し易いOSSと言われています。

なお、OSSは非常に有難い活動なのですが、Log4jのようなセキュリティの問題も発生しています。
セキュリティや不具合発生時の保守サポートが受けられないなどの課題はあります。

 

www.ipa.go.jp

無料サービス

Googleアプリを代表格として、一定の条件下(一部機能が利用できないなど)では、無料で利用できるサービスが増えています。
身近なものとしては、携帯アプリのゲームは有料アイテムを購入しなければ、無料で遊ぶことができます。
ビジネスで利用できるGoogleアプリをいくつか挙げたいと思います。

Googleアプリ
アプリ 概要 無料の制限
Gmail 言わずもがなのメールアプリ Googleアカウントとして15GBまで無料
Google meet 最大250人まで参加できるビデオ会議アプリ 会議の録画、ライブ配信、管理機能などは有料
Googleドライブ ファイルを複数の端末で共有できるクラウドストレージサービス Googleアカウントとして15GBまで無料
Googleマップ 訪問先の会社までナビゲーション API利用は別途有料
Googleドキュメント Wordのようなドキュメント作成 Googleアカウントとして15GBまで無料
Googleスプレッドシート Excelのような表計算 Googleアカウントとして15GBまで無料
Googleカレンダー カレンダーでスケジュール管理できる。会議調整も可能 すべて無料

 

まだまだ多数の無料のサービスがありますが、紹介しきれませんので、この辺にしておきたいと思います。
Googleドキュメントなどのアプリは、スマホでも操作でき、取引先との議事録を電車内でスマホで入力し、続きを帰社後にPCで追記することも可能です(スマホとPCが連動)。

 

このようにOSSや無料サービスの出現によって、デジタルの限界費用が限りなくゼロに近付いていますので、このようなツールやサービスを活用することによって、ソフトウェアライセンスの費用削減を行うこともできますし、また、デジタイゼーションとして新しいツールを試し、上手く活用できるようであれば、そのまま無料のまま活用したり、最低限の有料プランでコストを抑えて、社内で活用することもできます。


1995年に、Windows95のOSが発売され、PCの普及が広がりましたが、それでも当時は、PCは高価で購入するのはそれなりの決心が必要でした。
現在では、日常生活で利用するために、スマホを購入すると、便利な無料サービスを多数利用できるようになっています。
また、レノボやエイサーなどのPC自体も数万円で購入できるものもありますし、数千円でレンタルしているサービスもあります。
最近、日本はデジタル庁が新設され、DXに取り組まなければならないと言われていますが、すでにデジタルが当たり前に溢れかえっている世界に住んでいる私たちは、それらのツールを活用することで、酵母を入れれば自然に発酵して美味しい食品を作るように、自然発生的にデジタルのプロダクトやサービスが生まれるようになったのではないかというのが、落合陽一先生が考えている世界観だと思われます。

 

個人的には「デジタル発酵」の社会が出来上がるまででには、もう少し時間が掛かるのではないかと考えていますが、それよりもビジネスとして考えなければならない点としては、世界の動きよりも先行して、OSSや無料サービスをビジネスに活用する点ではないでしょうか。
ただ、OSSはセキュリティ、無料サービスは本格的な利用では追加費用が発生するなどの課題がありますので、全てのツールが業務に活用できわけではありませんが、中小企業、零細企業、個人事業主ではこれで十分だと言えるものも多数あります。

 

前述のキュウリ農家の小池誠さんは、AI処理にGoogleが開発したTensor Flowを活用しています。
Tensor Flowはオープンソースとして公開されており、Apache 2.0 license(ApacheOSS基準)に準拠しているため、誰でも無料で利用することができます。

また、現代ではインターネットでは情報が溢れ返っていますが、Tensor FlowとPythonの情報もご多分に漏れず、インターネットに無料で公開されています。
高価な書籍を買わなくても、誰でもある程度は勉強できる環境が整いつつあります。
Tensor Flowは少ないですが、Pythonについては無料のセミナーや勉強会も盛んに行われています。

 

小池誠さんのようなイノベーションは、自分たちで取り組もうと思っても技術力がないと難しいですが、コストや情報の側面では敷居が下がっていますので、努力すれば、手の届く距離に来ていると思います。
日常の業務で忙しい状況ではあると思いますが、熱意があるスタートアップ(ベンチャー企業)や個人事業主であれば、こうした無料及び低コストの技術を活用して、DXやデジタイゼーションに取り組み、誰もが変革を実現できる時代になりました。
また、日本のデジタル分野はまだ成熟していませんので、中小企業がイノベーションによりゲームチェンジを実現し、大企業の市場を奪い取る下剋上も可能かもしれません。

 

また、このような無料及び低コストの技術を活用した取組によって、個人の給与を上げることもできると思われます。
変革の取り組みにより、今の会社を変革して収益向上を実現し、結果的に給与を上げることができますし、また、個人でこのような取組を行ってその技術をアピールし、より高い年収の企業に転職することも可能と思われます。
小池誠さんは貴重な人材で、農機具メーカーがノウハウを欲しいと言って、仕組みごと買い取るかもしれませんし、SIerイノベーションの事例を啓蒙するコンサルタントとして採用するかもしれません。
2030年にはデジタル人材が45万人も不足すると言われていますので、これからチャンスが巡ってくるように思われます。