何でも言ってやろう

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日本の給与はなぜ上がらないのか?⑪

お金

※写真はイメージです


以前より、日本の給与を上げるために、「地方・中小零細企業」の変革の必要性を検討してきました。

 

地方では第一次産業である農林水産業が主要産業のようにイメージしている人もいるかもしれませんが、エッセンシャルワーカー、建設業、製造業などの従事者が多く、日本全体の統計でも第一次産業の就業者はわずか5%に減少しています。
就業者は多いとは言えないため、第一次産業の改革が、日本全体の給与アップにつながるとは思えないという意見もあると思いますが、私たちが生きていく上で欠かせない「食」を支える第一次産業は重要だと思われます。


また、2013年にユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録され、2021年には農林水産物・食品の輸出が1兆円超えました。
2012から10年で、農林水産物の輸出は2倍以上の拡大を実現していますので、農林水産業は成長の伸びしろを持っていると思われます。

 

農林水産業はわずかな希望はあるものの、ご存じのとおり、課題の方が多く、高齢化や後継者不足などにより、農林水産業の就業者数は、減少の一途を辿っています。
昭和35年に1340万人もいた就業者は、平成22年には252万人の1/5にまで就業者が減少しています。

 

また、令和元年の調査では、産業別の平均年収において最も低いのが、農業水産業であり、300万円以下になります。
全国の平均年収436万円に対して、3/4程度の年収しかありません。
日本の平均給与を上げるためにも、一番年収の低い農林水産業の改革も必要と思われます。


農林水産業は、今後の日本を下支えする産業になるのか、後継者がおらず衰退するのかの岐路に立っていると思われます。
農林水産省地方自治体では、スマート農業等により、農林水産業拡大・改革を進めようとしていますが、この取り組みの成否について、要因の一部を握っているのは、農協(JA)だと思われます。
今回も、「何でも言ってやろう」というブログのタイトルにふさわしく、農協(JA)について忖度なしで語りたいと思います。
(JA関連の方々には、先に謝罪しておきます。申し訳ございません)

 

さて、JAの財務状態としては、肝心な農業関連事業などの本業は赤字が続いており、副次的な取組である信用事業(金融)と共済事業(保険)で黒字を稼いで、本業の赤字を補填しています。

 

JAが農家や一般人などから集めた預貯金は、農中農林中央金庫が資金運用を行っていますが、銀行のように企業に出資するノウハウがなく、ハイリスク・ハイリターンである海外のCLO(ローン担保証券)などを購入して運用しています。
今のところ、CLOは元本割れしているものの、巨額損失は発生していませんが、日本国内のマイナス金利政策、他金融機関との競合激化もあり、収益が悪化している状況です。
尚、2020年度は米国の利下げにともなって、資金調達費用が低減して収益拡大しましたが、肝心な資産運用の収益は減少しています。
心配されているよりは損失は少なったのですが、依然、CLOなどの含み損がもっとあるのではないかと言われています。

 

現在、JAバンクのライバルである銀行は、低金利の長期化により収益が悪化し、経営改善を急いでいます。
店舗を減らし、大規模な人員削減にも着手し、地方銀行の再編も行って、リストラにより贅肉をそぎ落とし、フィンテックなどの新たな経営に取り組み、顧客により付加価値のあるサービスを提供しようとしています。
農中農林中央金庫には、改革やデジタルのノウハウがなく、銀行と同じような改革は難しく、旧態依然とした経営状況が変わっていません。

 

こうした影響を受け、農中農林中央金庫はJAに支払う奨励金を引き下げています。
JAが農家から集めたお金を、農中農林中央金庫に預けて運用を委託していますが、その代わりに奨励金を受け取っていますが、農中農林中央金庫は先行き不安から奨励金を引き下げています。
JAは赤字を信用事業で得られる奨励金で補填していたため、JAおきなわやJA山口など、各地のJAの経営が悪化し、支店の統廃合やJA合併などを余儀なくされています。
金融のプロではないJAが、農家の大切な資産を運用することに限界を感じます。

 

また、JAが信用事業を営む意義としては、地元の農家、農業法人、地元企業などへの融資を行うことで支援することだと思いますが、海外のリスク資産に投資することも、
赤字垂れ流しの農協の補填に利用することも、当初の目的を忘れており、本末転倒な経営だと思われます。

 

また、JAは共済事業でも同じような問題を抱えています。
共済事業も、保険会社と同じ事業を行っていますが、JAが営むことで、農家にイメージとして安心感を抱かせ、昭和の時代には数多くの組合員を集めました。
しかしながら、組合員の高齢化で多くの契約が満期を迎え、保有契約高の減少とともに、付加収入が減少しています。

 

これまでJAの赤字を補填してきた信用事業と共済事業が収益が減少する中、JAの経営が難しくなってきています。
JAは収益向上のために、農業に関係のないコンビニ、自動販売機、ガソリンスタンド、葬祭業などの多角経営の取り組みを行っていますが、成功していないケースも散見されます。
元々経営ノウハウを有した人材がないJAが、他分野に参入しても成功できないでしょう。
また、JAが農家に関係のない事業に力を入れていることは、目的を見失っていると思われます。

 

このように、JAには数多くの問題がありますので、信用事業・共済事業にメスを入れる必要があるように思われます。
信用農業協同組合連合会や農中農林中央金庫などの県や全国段階の組織に信用事業を譲渡し、JAはその代理店として金融サービスを行うように変革するべきと思われます。
また、農中農林中央金庫はリスクの高い金融商品に投資することしかできず、
融資のノウハウが不足していると思われますので、銀行ではなく、ヘッジファンドとして他の企業と合併するべきです。
また、お金をお預かりしている農家にも、ヘッジファンドとしてリスクを開示するべきと思われます。

 

前述のとおり、ユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録され、農林水産物・食品の輸出が1兆円超えましたので、日本の農業は発展の可能性を秘めています。
今こそ、ビジネスモデルへの転換やスマート農業等により、農林水産業を改善するべきときになりますので、JAに課せられた役割は大きいと考えています。
全国のJAの中には、ビジネスモデルへの転換やスマート農業等のノウハウのないJAもいますが、農家ファーストの意識を持ち、やる気のある若い農家と手を携えて、新たな一歩を進んでいくべきと思われます。