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日本の給与はなぜ上がらないのか?④

お金

※写真はイメージです


今回も、引き続き、「都市・大企業」の日本の給料はなぜ上がらないのかを語りたいと思いますが、第4回目になってしまいました。
……長いですね(+_+)。
「都市・大企業」については、今回で最後にしたいと思います(地方・中小零細企業にテーマを変更します)。

 

「都市・大企業」はどの企業でも多かれ少なかれ、大企業病に罹っていると思われます。
大企業病は企業の宿命であり、組織が大きくなり、何千人も、何万人も従業員が増えると、必ず発生するものと思われます。

日本の古き大企業ではイノベーションが起きず、既存ビジネスも先細り、大企業病に侵されて、ゆっくりと死に絶えになっていこうとしています。
多くの大企業が改革しなければいけないと焦り、何かヒントを得ようと、GAFAなどのシリコンバレーのIT企業の日本人ツアーに参加したりしています。

 

それでは、大企業病を治癒するために、シリコンバレーのIT企業のような働き方を取り入れば、大企業病が改善しますでしょうか?

 

シリコンバレーのIT企業のような働き方を取り入れば、日本の大企業病が治癒するのか?

www.recruit-ms.co.jp

Googleは新卒はあまり採用しておらず、ほとんどの社員は中途社員となります。
また、新卒でも博士号や修士号などを取得している人が中心で、優秀な人のみを採用しています。 
スキルが高く、自分のやりたいことと、会社の業務が合っている人材を集め、三食・遊技場を提供し、勤務時間すら自由にし、働きたいように働かせ、ただし、成果だけは出さないといけない仕組みにしてます。

 

GoogleではOKRで目標と作業状況がすべて公開されています。
他プロジェクトのOKRを読み込んで、成功するチームに参加し、成果を上げる必要があります。
それは制度しても、設けられていて20%ルールで自分のプロジェクト以外にも、参加したい他のプロジェクトがあれば参加することができます。
実際には、成果を出すために残業することもありますので、20%ルールを効果的に利用できないと言いますが、人事評価の対象でもあり、本業以外の成果を生み出すことを期待されています。
なお、Google実力主義のため、ボーナスにも差があり、成果に応じて年間84~780万円と幅広いものとなっています。

 

Google米国の元副社長であり、日本法人元社長であった村上憲郎さんは
帰宅しなくても生活できるようにして、寝食を忘れて働いているんだから、Googleってブラック企業だよね
とおっしゃっていたそうです。

 

また、Googleは莫大な広告収入があるので、それを投資に回すことができ、潤沢な予算の中で、上記の楽しんで働き、新たなイノベーションを生み出しているのでしょう。
企業として投資する原資が潤沢になければ、このような働き方を取り入れることは難しいと思われます。

 

上記のことから、日本の大企業が安易にシリコンバレーのIT企業の働き方を取り入れても、成功しないものと思われます。
シリコンバレーのIT企業の働き方を取り入れる場合、出島戦略や社内ベンチャーなどの工夫が必要だと思われます。
両利きの経営を取り入れて(後述)、既存ビジネスの収益の安定と業務効率化、柔軟な新規事業の創出が必要になります。

 

■正社員は守られている

 

日本は平均賃金が少ないものの、失業率は102/106位に抑えられており、安定した仕事に長く務めることができます。

 

ecodb.net

収益により企業が支払う人件費の枠は決まっており、社員単位の給与を増やすためには、二人分も、三人分も実績を上げる優秀な社員に給与をたくさん払って、他の成績の悪い社員はリストラするしかありません。
給与アップと安定した雇用は、相反するものになります。
日本では正社員は守られているため、弱肉強食と言えるまでの競争はなく、大きな成功による大きな報酬を得ることはありませんが、横並びで一定程度の生活を送れる給与をもらうことができます。

 

社会主義国の中国生まれのジャーナリストの周来友さんが面白い記事を書いていました。

日本は世界に誇るべき「社会主義国」です。

 

www.newsweekjapan.jp

法律上は正社員も事前通告及び退職金を支払えば、自由に解雇できるのですが、「判例」という曖昧なものにより、司法が正社員を守っています。
「労働契約法第16条」では
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする

となっており、合理的理由の説明が難しく、正社員は解雇できない状況にあります。
例えば、「営業成績が悪い」という理由だけだと「合理的な理由」にはならず、「本人に成績が目標以下であることを説明し、努力を促し、1年間程度、上司や先輩によるOJTや外部研修などにより支援し、それでも結果が出ない場合」といった説明が必要になります。
会社側が改善のために誠心誠意努力した事実が必要で、また、個人の恣意的な判断ではないことを証明する必要があります。

 

判例という曖昧なものでは、客観的かつ合理的な判断はできず、企業は司法を慮り、機動的な人材の新陳代謝を行うことができません。
正社員を派遣契約と同じレベルにし、簡単に解雇できるようにするべきではないとは思いますが、正社員の解雇基準の明確化を行い、より客観的かつ合理的に解雇を行うことができるようにするべきだと思います。
解雇後の再就職の問題は、企業の問題ではなく、国のセーフティネットや学び直しの制度が担うべきと思われます。

 

また、「都市・大企業」について最後に2つの論点を語っておきたいと思います。

 

■日本人は残業ばかりしているのか?

 

日本のサラリーマンは残業ばかりしていて、男性が家事や子育てに参加せず、長時間労働によって健康を害し、過労死や鬱病につながっていると言われています。

 

これって本当でしょうか?

世界・平均年間労働時間ランキングを見てみましょう。

 

top10.sakura.ne.jp

日本は平均値に近く、平均値との差は20時間しかなく、1日に換算すると3分17秒(1,200分÷365日)になります。
誤差の範囲になりますので、ほぼ平均と考えてよいでしょう。

日本のサヨクがこの統計に反論していて、非正規雇用、短時間労働のパートタイムワーカーも含んでいるため、男性単体の労働時間で比較するべきという意見もありますが、それでは本末転倒と思われます。
諸外国では男性であっても、「ワークシェアリング」「週休3日」「ジョブ型雇用」の制度が普及している国もありますので、それ以外の要因でも男性単体の労働時間に差が出ます。
単純に日本ではジェンダーギャップがあり、家族構成として、男性が正規社員、女性が「時短で働く」もしくは「専業主婦」のケースが多いだけです。

 

■日本人は有給休暇を消化していないのか?

海外では仕事が一段落したら長期のバカンスを取得するのが一般的で、日本人は有給休暇をぜんぜん消化することができないと言われています。
世界的に見ても、日本の有給休暇取得率は最下位とも言われています。

 

これって本当でしょうか?
世界の休暇日数を見てみましょう。

 

ascii.jp

平均値よりも2日程度低い状況がありますので、ゴールデンウィークやシルバーウィークの飛び石で休暇を取ったり、年末年始休暇に有給休暇をプラスしたりして、年に2日くらい休むようにした方がよいですね。
ただ、一般に言われているような長期のバカンスは不要にも思われます。

 

有給休暇取得率は最下位とも言われていますが、日本では祝日や夏休みといった制度があるので、有給休暇を消化する必要がないのです。

日本ではゴールデンウイークやシルバーウィークがあり、また、お盆休みもありますが、海外では夏休みという制度自体がないケースがあります。
海外ではバカンスを取らないと休む機会がないので、日本でゴールデンウイーク・シルバーウィーク・お盆休みで休んでいる分を、長期休暇としてまとめて休んでいるのだと思われます。


日本でも、年に追加で2日程度、有給休暇を消化するようにした方がよいですが、よく聞く、何週間もバカンスを取るべきだという意見には賛同しかねます。

 

今回を併せて、私のブログでは4回「都市・大企業」の給与が上がらない点について、批判を繰り返してしまいました。

国会で野党が叫ぶように批判は簡単ですし、建設的な意見ではないので、何も意味がありません。

 

それでは、「都市・大企業」は何を改善するべきか、最後に語りたいと思います。

 

■ピアボーナス制度

 

ピアボーナスとは「peer(仲間)」と「bonus(報酬)」を組み合わせた言葉で、従業員同士が感謝の気持ちを報酬としてプレゼントできる制度になります。
日々の業務の中で、従業員同士でそれぞれの仕事やヘルプを評価し、「報酬」を贈り合うことができるのが特徴で、前述のGoogleでも導入しています。
Uniposというツールもありますが、こちらのWebサイトではピアボーナスのメリットも分かり易く説明していますので、紹介しておきます。

 

unipos.me

運用方法にもよりますが、他部門が行った仕事やヘルプに限定し、一度に贈れる金額も上限を決め、上司承認の元、ピアボーナスを贈れるようにすることで、大企業病セクショナリズムが横行している企業では、組織の壁を壊すことの一助になるでしょう。
薬だけでは治らない病もありますが、大企業病をある程度改善する薬になると考えられます。

 

大企業では人事部は、管理職のレポートや取得資格でしか人材を評価することができません。
また、上司もイエスマンや仲の良い部下を評価し、部下のスキルを詳細まで分析できず、印象評価を行い、すべての業務を把握して冷静に能力を分析・評価できる上司はいません。
部下同士では縁の下の力持ちといった目立たない人も含め、仕事ができる人、できない人の評価を把握していますが、それは人事や上司の評価とは異なっていることがままあります。
現場で直接ボーナスを支払って、報酬で人材の評価を行うことで、公平な報酬に近付けることができると思われます。

 

■両利きの経営

グローバリゼーションや変化の激しい市場に対応するために、企業は新たなイノベーションを生み出す必要があります。
両利きの経営では、現在の主力事業も効率化を行い、より深化させつつ、積極的に新規事業にも投資を行い、新たなビジネスを生み出していきます。

 

www.hrm-service.net

新規ビジネスを「知の探索」と呼び、既存ビジネスを「知の深化」と呼んでいます。

 

「知の探索」とは、新規ビジネスを考案するために積極的にアイデアを探し、既存ビジネスで得た利益を積極的に投資し、将来儲かる可能性のあるビジネスを実験的に行っていきます。
企業は成功体験から抜け出せず、収益を生む既存事業にばかりに人材と投資を行います。
また、新規ビジネスはノウハウやリテラシーがないことから、失敗を恐れて尻込みして「知の探索」が疎かになります。
「知の探索」を会社の命題として位置付けることで、中期経営計画よりも、先にある将来のビジネスに投資することができます。

 

また、両利きの経営では「知の深化」も重要視しており、成功している既存ビジネスを効率化したり、既存の製品のモデルチェンジ等による収益向上を目指したりします。

 

社内ベンチャー or 出島組織

 

両利きの経営で重要な点は、既存ビジネスと同じ組織、同じ制度、同じ評価などでは、新規ビジネスが上手くいかないということです。
新規ビジネスは顧客のニーズ検証や開拓から始める必要があり、数年間、結果が出ないこともあります。


また、新規ビジネスの成功率として参考になる数値として、例えば、20年後のベンチャー起業の成功率は約0.3%と言われていますので、大企業の社内の新規事業であっても、同程度の可能性が高く、1,000のアイデアを試して、成功するのは3つ程度と考えられます。
短期的に個人や新規ビジネスを評価しても、すぐには結果が出ず、ビジネスが中止となり、参加している社員も評価されず、モチベーションが下がってしまいます。

 

また、大規模な組織を作ってしまうと、既存ビジネスと同じように判断が遅くなり、セクショナリズムが横行し、新規ビジネスの判断に時間が掛かるため、新規ビジネスは少数精鋭で組織を構成し、イノベーションに必要なスピード感に対応できるようにします。
既存の社内ルールや前例主義は、新規ビジネスの邪魔者以外の何物でもありません。
新しい環境やルールの中で、権限や予算も与えなければ、新規ビジネスは成功しません。
そのため、新規ビジネスの立ち上げのためには、企業内の社内ベンチャーや出島組織が必要になります。

 

さて、これまで4回に渡り、日本の「都市・大企業」の変革について語ってきました。経営者を擁護するような論調で語ってきましたが、もちろん経営者にも課題があるのは明らかです。

ピアボーナスや両利きの経営などの方法論も述べましたが、方法は何でも良く、要するに、変革を実現するためには、努力している現場を支援する仕組みが必要で、経営者がそれをフォローするべきと考えられます。
ピアボーナスは現場同士で支援させる方法であり、両利きの経営は小さい組織により、経営層にも現場を見える化し、スピーディな判断や必要な支援を行えるようにする方法です。
大企業になると、経営層が現場まで理解することは難しいかもしれませんが、それを改善しない限りは日本企業の変革の実現はできず、日本人の給与も上がらないと考えられます。

 

簡単そうに見えて、難しいことを語りましたが、「都市・大企業」については、以上としたいと思います。

 

次回からは、「地方・中小零細企業」を語りたいと思います。